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炎上












ああ、聞こえる。俺を心配してくれている皆の足音が。ほら、もう病室に着いただろう。

「兄さん!」

音夢の声だ。やっぱり音夢が一番早かったな。音夢は俺の姿を見るなり、大粒の涙をこぼした。

「朝倉!」

「朝倉君!」

皆来てくれた。俺の為に。俺を心配して。皆、悲痛な表情を浮かべ俺を見ている。

「どうした、皆?情けない顔して」

「どうしたじゃないでしょ!皆、アンタのこと心配して来たんじゃない。アンタって、本当に…馬鹿……なんだね…人の、気も知らないで…飄々としてる…なんてさ」

俺は眞子の涙に面食らった。眞子の涙なんてこれまで見たことあったか?いや、ない。そんなことを考えている内に俺の腹に柔らかい重み

が舞い降りた。俺からは見なれた帽子だけが見えている。

「ことり、泣くなよ。俺のためなんかで。俺の為に流す涙なんか俺は望まない」

「だって、だって……朝倉君が、死んじゃうかもしれないって思ったら……」

「俺が死んでも、泣くなよ絶対。皆も頼むよ、俺が死んでも泣かないでくれ、未練が残って成仏できないからな」

俺は笑える冗談ではないことを分かっていたが、それでも、やりきれない気持ちで一杯だったから、空元気でも皆に見せてやりたいんだ。

俺は皆を泣かすことなんかしたくない。出来れば、誰にも知られずに俺は死にたい。

「頼むよ、泣くなよ……なあ、俺ももう限界なんだよ……揺らいじまうんだ。」

俺も、こみ上げる熱い想いに抗えなくなってきていた。ふと、さくらが優しく呟いた。

「いいよ、おにいちゃん。我慢することなんかないんだ……泣いていいんだ。弱くていいんだ。それが―――ありのままの姿が一番かっこいいのがおにいちゃんなんだから、ね……?」

俺の目からも遂に熱い想いが零れ落ちた。逃げるようにして病室から外の広場に出る。

「はぁ、はぁ……くくく、理不尽だよな。何で俺なんだよ。俺が何の罪で死ななきゃいけないんだ?死にたくねえ……死にたくねえよ……!」

止まってくれと懇願しているうちにも俺の目からは止めど無く涙が溢れている。それらが眩しい太陽を反射し、俺に光を当てても、俺の闇は消えることなく存在した。居座りつづけた。

闇は俺の中で息づき、咆哮を上げていた。






























「おにいちゃん、気分はどう?」

「さくら……神様を呪っている以外は至って普通だよ。それより、どうした急に?なんかあったのか?」

「ううん、おにいちゃん、一ヶ月近く外に出てないでしょ。ボクと一緒に外に出かけよう?退屈だし」

願ってもない申し出。俺は近々病院を脱け出し、自分の家に帰ろうと思っていた。さくらと一緒なら怪しまれずに外に出れる。

久しぶりに吸う外の空気は、病院の綺麗過ぎる空気よりも肺に優しいように感じた。俺には、やはりこの桜色の空気が必要だった。

深呼吸を続ける内に急に胸に何かが詰まったようなものを感じて、咽込んだ。乾いた咳と胸の激痛に顔を歪め歩を止める。

「大丈夫?外の空気は雑菌だらけだから、あんまり深呼吸なんてしちゃダメだよ。おにいちゃんの心臓と肺はもうボロボロなんだから」

病気になる前には考えられないほどの激痛。もう慣れていた。慣らされていた。俺の心肺を蝕む病魔は休む事を知らなかった。最初はそれこそ発狂しそうな痛み。今はなんとも思わない。ただ痛いだけ。

が、俺の中の痛みの質が急に変わった。なにか、体内から叫ばれているような感覚。瞬時に悟った。

―――俺の中の闇が恫喝している。

飢えと渇きを訴えている。だが闇が欲しがったのは水分でもなく食料でもなく、女だった。女に飢えていた。目の前にいるさくらが突然艶を帯びて見えた。

俺たちは桜の巨木の下に座り込んでいた。薄緋色の天井。枝という梁。幹という柱。花びらという絨毯。さながら一室の中にいるような錯

覚に陥りながら、俺はさくらの艶やかな唇を凝視していた。

何をやっているんだ俺は。さくらに欲情?馬鹿な。けど、疼く。なんだ、熱い。理性が脳みそごと溶かされてるみたいだ。

外れる―――理性

暴れる―――本能

俺の中で何かが、爆ぜた。

「さくら……」

俺はさくらの身体を抱き寄せた。

「おにいちゃん?どうしたの?」

何がしたいのか理解できないという表情。構わず俺はさくらの唇を塞いだ。スカートの上から手で下腹部をまさぐった。

「ん、んふ、んちゅ……んや、ふ、ふぅ……」

唇を離すとつつっ、と唾液が俺とさくらを繋いだ。下腹部をまさぐる手は止めない。

「や、やめ、おにいちゃん……?あ、ああ……ぅ」

紅潮した頬。定まらない虚ろな瞳。甘やかな吐息。扇情的だった。が、不意に聞こえた―――足音。俺はすぐさま手を引っ込め、身体を離した。

「朝倉君?何やってるのこんなところで!?病院は?」

ことりだった。俺は漏れそうになる舌打ちを閉じ込め優しく言った。

「ああ、さくらが俺の外出届を申し出てくれたんだ」

「芳乃さんが……?あれ、芳乃さんなんか辛そうだよ、大丈夫?」

再び漏れそうになる舌打ち。なんとか堪えた。

「ああ、白河さん……ボクは大丈夫だよ。ちょっと熱があるだけ」

ことりはなおも心配そうな顔をしていたが、俺に任せろと言うと安心したような表情を浮かべた。

「芳乃さん、無理しないで下さいね。それじゃぁ私、買い物頼まれてるから」

俺は唐突に自分のしたことに罪悪を感じた。後悔と自責。それと自嘲。

「俺は、何をやっていたんだ……」

―――何をやっている。目の前の女が欲しくて仕方ないのだろう?偽ることは無い。お前の望むままにその女を壊せ。

ふざけるな。俺はガキの頃、さくらを泣かさないと誓った。小さな俺の聖なる誓いだ。背くことは無いんだ。

―――何を迷っている?その女を愛しているのだろう?先程まで自分の欲求のままになっていたではないか。素直になれば良いのだ。何も偽る必要など無い。

俺に……その資格は無い。俺はさくらを抱く資格なんか無い!

―――資格はある。人間は愛し合う者同士がその行為をする。その女もお前を愛しているのだ。お前に抱かれることを心待ちにしているのだ。

そんな…そんなこと、あるわけが……俺はさくらを……

―――行為をすることは愛を示すことだ。違うか?お前はその女を愛していると伝えるために行為をすれば良い。

俺はさくらを…愛しているのか?

―――そこまでは俺には分からない。俺はただ女が欲しいだけだ。

俺はさくらを……愛しているんだ!

「おにいちゃん?どうしたの?」

「すまん、さくら。赦してくれとは言わない。俺を憎んで良い。だから―――」

俺はさくらを抱きしめ、深い口付けを強要した。舌と唾液の絡まる音が俺の耳に木霊した。そのままさくらを押し倒した。

「おにいちゃん……ボクは、おにいちゃんの事好きだよ」

さくらは、俺を哀れむような目で見たが、もう俺は俺自身を止めることは不可能だった。歯止めの利かない闇の欲望。俺を突き動かし、俺を駆りたてるもの。

ウエトカワキハツイニホンリュウトナッテココロトカラダヲオカス

衣の裂ける音。俺はさくらの着ている服をビリビリに破いた。それでもさくらは薄く笑んだまま表情を変えない。が、微笑みは俺の心に響くことは無かった。

幼い膨らみに舌を這わせる。さくらのくぐもった声が俺を更にかき立てる。

なにも生えていないそこは、肌を直接空気に曝し、ぬらぬらと光っている。

さくらのそこに舌が、指が這い回る。初めての快感、さくらの嬌声は甘い。

俺の直立を、侵入を拒むさくら自身に押し当てた。無理矢理に抉じ開ける。

悲痛なさくらの叫び。いつしかそれは快感に喘ぐ姿にさま変わりしていた。

俺とさくらの快感は遂に頂点を迎える。ただ快感を貪り禁忌を犯していた。

同時に迎えた絶頂。これから始まる闇黒の日々を暗示しているようだった。

「おにいちゃん……ボクは、後悔してないよ。だって、ボクおにいちゃんの事好きだもん」

さくらは努めて明るく振舞った。明るく努めていたのは一目瞭然だった。服を着ようともせずに、俺を凝視する。身体に痕った無数の愛撫の痕が痛々しい。が、それ以上に俺がつけてやったと思うと嗜虐的な喜びが脳内を駆け巡った。

―――うれしいだろう?女を虐めるのは最高の快感だ。くく、お前も俺と同類だよ。

ああ、俺もそう思う。素直に全て認めるのは癪だが、俺はさくらを蹂躙する事にこの上ない喜びを覚えた気がする。

さくらは怯えたような光を目に宿した。知らず知らずのうちに俺は笑んでいたのだろう。嗜虐的な笑みは薄気味悪さを超越した恐怖をさくらに与えていた。

「さくら、服着ろ……ってすまん。俺が破いちまったんだな。これ着て待っててくれ。着替えを持ってくる」

さくらは俺の上着を受け取り、頷いた。俺がいなくなる事に対してか安堵の表情を浮かべていた。



































俺はさくらに謝罪の一言も言わず、その場から逃げ出していた。さくらに服を渡した後一目散に走り出した。

「くく…くくくくく。馬鹿なことを。俺はなんて愚かなんだ。くく…ははははは……!」

―――まだ、俺は足りないぞ。もっと女を抱け。蹂躙しろ。お前も俺と同じだ。お前ももっと女を抱きたいだろう。

うるさいぞ。少し黙ってろ。お前に指図される覚えはないんだ。さくらを抱いたのだってお前の指示に従ったわけじゃない。俺自らの意志だ。お前には関係無い。

―――強がるな。まあ、いい。じきにお前は俺に屈服するようになる。いや、俺とお前は同化するのだ。

ふざけるな。お前になろうとは微塵も思わない。俺は俺でいたいし、いるんだ。お前は俺にはなれない。お前でいるしかないんだよ。

―――馬鹿が。お前の意志など関係無い。抗えないのだ。なんの抵抗もできぬままお前は俺となり、俺はお前となる。揺るがない事実だ。

理解しろ。嫌なら死ね。もっとも、俺は死なれては困るがな。

畜生が。俺はもう女なんて抱きたくないんだよ。さくらで懲りたんだ。あんな腹ン中に鉛を押し込まれたような気分はもうたくさんだ。

―――だから死ねばいい。お前は死ぬのが怖いか?

今死ななくても、俺はもう一年もすれば死ぬんだ。なら、あと一年誰も抱かない。

―――だからお前は馬鹿なんだよ。あと一年間も苦しみながら死ぬのと今すっぱり死ぬの、どっちが楽かなど考えずとも分かるだろう。も

う終わりだ。人間は根底にある欲望に勝てはしない。お前は苦しみ悶え、一年間を過ごすんだ。

それでいい。それで構わない。その時はお前も死ね。それともう一つ、お前は今何故俺に助言したんだ。俺が生きていくのはお前にとって

好都合な事じゃないのか。なのに何故俺に死ねという?何がしたいんだ?

―――そんなこと知るか。悪魔は気まぐれなんだよ。闇に生きるものは退屈をひどく恐れる。俺もその例に洩れないんだろうよ。

その言葉を最後に闇の咆哮は途絶えた。俺の思考を侵食していた黒い意識も晴れ、俺には理性という名の抑制機が再びはめられた。

桜公園の高台に来ていた。そこからは海が見えた。青く、深く、広く、大きい澄み渡った海は、俺を頑なに拒むように荒れているように見えた。波がある訳でもないのに、潮騒が俺を拒んでいるように思えて仕方が無かった。居心地の悪さを覚え、神聖な澄み渡る海を後にした。

あてどもなく見慣れた商店街を歩く。外出許容時間はとっくに過ぎていた―――帰る気は無かった。不意に覚えた破壊衝動。それは際限なく膨らみ、臨界点を容易に超えようとしていた。

このまままっすぐ歩けば、前から来る人にぶつかる。俺も―――どちらも譲る気はなかった。

「って。てめ、ぶつかったよな?あ?謝んねえのかよ!?」

「止めとけ。俺は気が立ってる。クチャクチャのボロ雑巾みたいになりたいか?」

恫喝。俺の眼は狂気に満ち溢れていた。破壊衝動は遂に臨界点を突破し、俺の全筋組織に血液を送りつづけた。漲る気概と筋力。俺は今、誰にも負けない自信があった。

「あん?なんだよその目つきは。お前がぶつかったんだろ!!」

こいつは唯の不良ではないことは分かった。ぞろぞろと同類の奴らとつるんでいない―――そうしなくても己が道を示せるから。張り詰めた筋肉―――何か体術をやっている。筋肉面積の割合は上半身に偏りがある。ボクシング或いは空手だろう。だが、年齢は俺と同じくらいか、下だった。年上ってことはありえない。

「忠告無視とは余程死にたいらしいな。それとも重度のマゾヒスト患者か?」

周囲には俺と奴の口論を聞きつけ人だかりができていた。が、俺には関係なかった。狙うは右の膝裏。ローキックだ。

硬い衝突音が響く。俺の蹴りは見事に膝の裏にハマり、一瞬で不良は膝から折れて地に沈んだ。下から腹部をアッパー気味に突き上げ、右の拳を顔面へストレートに叩き込んだ。心地よい粉砕感。鼻を砕いたのだろう。

「ぐ…く……てめぇ…!殺す!!」

鼻から噴出した血液を拭って尚も殴りかかってきた不良。俺は壁際へ逃げた。

「へ……もうお前は逃げられない。ボクシングをやってる俺の拳は凶器そのものだ。殺してやる」

やはりボクシングだった。俺の読みは当たっていた。とすると、全てがうまく行く。

奴の渾身のストレートは空振りに終わった。俺は拳しかない事を利用して下へ沈んで奴の背後へ回った。奴が振り返った瞬間、俺は逆に壁に追い詰めた。顔に腹に頭に胸に無数に拳打を浴びせていく。そのうち吐血し始めたが、関係なかった。無心に拳を振るい奴を壊した。

「朝倉先輩!!」

俺は奴の前に立ちふさがった人影に拳打を止めた。美春だった。美春は固く目を閉じ、震えている。俺は美春の頭に手を乗せクシャっと撫

でた。美春は目を開き安堵した表情になった。

「朝倉先輩どうしたんですか?こんな……こんな酷い事……」

美春はクチャクチャのボロ雑巾のような不良を見て顔を顰めた。不意に胸に激痛を覚え、聞きなれた咆哮が俺を劈いた。

―――抱け。この女を抱け。俺はこの女も欲しい。潤してくれ。

止めろ。出てくるな。もう誰も抱きたくない。傷つけたくない。俺は早く死にたい。

―――そう抗うな。お前も所詮人間の男。女を抱くのは愉しいだろう?この女もお前を愛しているんだ。お前もこの女を愛せ。

俺はもう誰も悲しませたくない!!

「あっ…朝倉先輩!?どこ行くんです?ちょっとぉ、朝倉先ぱぁい!?」

俺は美春を置いて走り出した。どこに行くかも考えずにただ無意識に走った。

肺が持たなくなった。止まった。景色を見上げウンザリした。俺の見慣れた自宅が目の前に鎮座していた。慣れとは怖いもんだと自分を呪いつつ、俺は自宅のドアを開けた。

見つからぬように自分の部屋に忍び込む―――はずだったが、思惑はあっけなく砕け散った。もともと俺の部屋と音夢の部屋は隣接した位置にあるので、見つからぬようにするのは難しいのが今更になって思い出された。

「兄さん!?何やってるんですかこんなところで。病院は?胸は大丈夫なの?」

―――わかってるな?俺はもう飢えて乾いて仕方が無い。お前も同じだ。飢えと乾きに呑まれ始めてるはずだろ?

うるさい!黙っていろ!お前が飢えようと乾こうと知った事か。女はもう抱かないといったはずだ。お前は引っ込んでいろ!

―――何を躊躇っている。自分の欲望に忠実になるのはあらゆる動物に共通する、唯一の真だ。この世で唯一の真理は本能のままに生きることなのだ。お前は自分を偽ったままでいいのか?

だ、黙れ黙れ!畜生が。抱かないと言ったら抱かん!お前の言わんとしている事も分かるが、そんな事は俺に関係無い。ただ俺は女を抱く事を拒絶するんだ。

―――お前がこうまで馬鹿だったとはな。まあいい。気長に待つとするか。お前もいつか堪らなくなってくるぜ。欲望を溜め込む事が人間の精神にどれだけ負担を掛けることか。

「音夢、すまん」

俺は未だに荒い息を吐いて、家から飛び出した。もう俺の居場所はここには無い。

無情だった。死を間近にして尚俺は辛い思いをしなければいけなかった。闇は俺の意識下で吼え続けた。

「さくら!!」

俺は畳が敷いてある和室の縁側から、さくらを呼んだ。足音が聞こえ始めた。

「おにいちゃん。どうしたの?」

「頼んでおいた薬はできているか?」

さくらは一瞬考え込むような表情を見せた。険しい表情は変えずに俺に問うた。

「オーバードーズ、過剰服用は絶対ダメだよ。もの凄く強い薬なんだから。あっという間におにいちゃんを崩壊させる」

俺は怜悧な笑みを浮かべて、言った。

「俺の命だ」
































自室に入った。一日二錠までとさくらの手書きで記されていた。あとはなんの特色も無い透明なビンの中に白い錠剤が詰められていた。一錠、手の平に転がしてみた。市販の風邪薬なんかと変わらない外見の中に、強い作用力を持った劇薬がいくつも入っている。

意を決して、俺は一錠口に含むと唾液と一緒に飲み込んだ。そのまま効き始めるまでじっと待ってみた。

五分ほどすると、俺の体の中が燃え始めた。熱い。骨やら臓器やら筋肉やらが俺の中で炎上しているようだった。

服用してから十分。俺の中の熱は引くことなく留まり、意識は覚醒していた。視界は鮮明になり、普段よりも色彩感覚が上がっていた。今ならドット単位で色を判別できた。

十五分もすると俺の脳内麻薬が溢れ出しているのが分かるようになった。意識は限りなくクリアになり、思考回路も通常の五倍ぐらいの速さで回っていた。

―――何をした?何を使った?意識が、俺と食い違っている。

感じた。闇は薬によって抑えつけることができる。闇は違和感と気分の悪さを訴えていた。

くくく……これはいい。お前はこの薬に弱いようだな。もう、お前の言いなりにはならない。お前は俺の中で封印される。

―――馬鹿な。何故お前は頑なに欲求を拒絶する?お前のような人間は初めてだ。

俺は、誰も悲しませたくないだけだ。

闇と通じている間も脳内麻薬は限りなく溢れ出してきていた。ふと思いついて俺はこの間学校で実施された全国共通学力考査をやってみた。

主要五教科の制限時間はのべ五時間。俺が全ての教科をやり終えるのに要した時間は二時間。とてつもない速さだった。

解答を照らし合わせてみた。五百点満点中、満点。成績優秀者リストから算出した全国順位はもちろんトップ。偏差値は通常測定不能の八十六。二位とは十点差だった。

俺は自分自身に畏怖した。同時に、さくらの作ったこの薬にも畏怖した。もともと成績優秀者リストには五十四位で載っていたがこれほどまでに思考力が上がるとは思っていなかった。

「くくく、ははははは」

歪笑。面白くて堪らなかった。誰にも負けない思考力。揺らぐことのない自信。眼前に広がる色彩溢れた景観。

そして、自信に満ち溢れた直後に死んでしまうという、根底の事実。

「マジで、この世ってのは理不尽なんだな。笑っちまうぜ。くはははは」

俺の顔は歪んでいた。笑みの形に。憎悪と悲壮の形に。喜怒哀楽が全て混ざった混沌の笑み。まさしく俺自身だった。

泣いた。笑った。全てをなくしたかった。ふっ飛ばしたかった。

ビンから白い錠剤を無造作に引っ掴むと、数に構わず喉を通した。

互いに相容れぬはずの白と黒。光と闇。今、俺の中で溶け合い、混ざり合い、爆発していく――――――。































薬を服用し続けて気付いた事。俺の服用している薬は異常なまでの性欲を煽った。女を抱くのを禁忌とした為に薬を飲んだ。が、今俺は女を欲している。まるで、俺に巣食うあの闇のように。

薬は闇を抑制していた。闇の咆哮は殆ど聞こえなくなり、今度は俺があの闇のように心中で咆哮していた。

―――お前は何の薬を飲んでいるんだ?この浮遊感、俺の存在が希薄になって仕方がない。が、心地いいのも事実。

暫くぶりに闇の咆哮が耳を劈いた。何か違和感を訴えるも、俺には何を意味しているか分からなかった。ただ、さくらにもらった薬が闇を抑制しているという事しか分からなかった。

さあな。俺はお前の声が聞こえなくなって清々しているがな。そのまま俺の中で永久に眠れ。

―――ふざけるな。俺はお前から生まれたんだ。お前の中に還っちまったら完全な無になっちまうんだよ。

そんなことは知らん。俺は俺の意見を言っているだけだ。

―――ちっ、意識が朦朧としてきやがったぜ。

闇の叫びは次第に小さくなり、やがてどんなに耳を澄ましても聞こえなくなった。

俺の中の何かが滾る。それは俺の中で激しく燃え上がり、俺の思考回路まで焼き尽くそうとしていた。

黒い焔。そう形容するのが一番相応しいそれは、俺の中を徐々に蝕み、侵食していく。これが、俺の欲望が激しく昂ぶる前兆だということは経験則から分かっていた。

「く……ちくしょう。なんでこんなに暴れるんだ」

思わず俺は胸を抑えた。そうすることが俺のこの欲望を抑えつけることに繋がるとでも言うように。

が、滾りは無限に燃え上がり、俺を侵した。

ピンポーン。

不意にインターフォンが鳴った。音夢は外出していて不在だった。俺はおぼつかない足取りで応対に出向いた。

「朝倉君。大丈夫っすか?」

ことりだった。俺は舌打ちしそうになった。今ことりに上がりこまれたら、どうなるか分からなかった。

「ことり……音夢なら留守だぞ?」

「?ああ、違います。音夢に用じゃなくて、朝倉君に用です」

「どうした」

「退屈してると思って。それにご飯も食べてなさそうだし」

動揺。葛藤。ここでことりを無碍に扱えばことりは悲しむ。かといって家に上げれば確実に俺はことりに襲い掛かるだろう。思考をまとめようと努力した。が、黒い焔がそれを邪魔した。俺の意識は完全に黒い焔に染められていた。

「そうか……まあ、あがってくれ」

馬鹿野郎。何故追い返さなかった。もう遅い。ことりは満面の笑みを浮かべ俺の後についてきていた。俺の精神の強さに賭けるしかない。

ことりが来ているのに自室に篭るわけにもいかず、俺はリビングのソファに腰を落ち着けた。

「はい、朝倉君。ちゃんと食べなきゃダメだからね?」

丁寧に作られた料理。どれも美味で、あっという間に平らげてしまった。

血液が一層強く脈打つのを感じた。邪な俺の黒い意識は俺を支配していく。

「ことり……」

俺はことりの手を引き、ソファに押し倒した。何が起こったかわからないことりは、目を大きく見開いた。

「あ、あれ?朝倉君?」

俺は長く赤い流れるような髪から見え隠れすることりの首筋に唇を這わせた。息を飲むような音が聞こえた。

「あっ……朝倉君?何?」

ことりは抵抗せずに俺の行為を受け入れた。唐突過ぎて抵抗するどころか、何が起こっているか分からないような節も見受けられたが、俺

は構わずことりの上着に手をかけた。

「ちょ、ちょっと朝倉君?なんで……」

「ことり、俺のことが好きだろう?自惚れる訳じゃないが、俺はそう確信しているんだけどな」

「……朝倉君の事は好きです。私、朝倉君に恋しているのかもしれません。だけど、こんなこと……急過ぎません?」

「行為をする事、それ即ち愛の形だ。俺はそう思っている。そう信じている。ことりには理解してもらえないか?」

「分からなくも無いですけど。でも、こういうのってお互いに了解しあって、する事なんじゃないんですか?それに私、朝倉君にまだ愛の

言葉を囁いてもらってません」

俺は狼狽した。いくらことりでも多少は抵抗するだろうと思っていた。が、目の前にいる完全無欠の美少女は俺の行為を全く拒絶しなかった。

数秒でそんな事はどうでも良くなった。俺の中の黒い焔は最高潮に炎上し、俺を焦がした。もう、抑えられない。抗いがたい衝動がデジャヴとともに俺を襲った。

「ことり……愛しているよ。ただ、幸せにはできないかもしれない。俺は君と繋がる事で世界一の幸せ者になれるけど、俺は何もしてあげられないかもしれない。だから俺は、俺の全てをことりに捧げる。俺のためには何も無い。ことりの為に俺は存在し続けよう」

「朝倉君、そんな甘い事言う人でしたっけ?」

ことりはクスクスと笑いつつ、服を脱ぎ始めた。矛盾していた。俺は女を悲しませたくない故に、女を抱く事を拒絶した。だが、今は女を抱いても、悲しませるような事にはならないのではないかと思うようになっていた。

肌蹴た衣服から覗く白肌は、真珠よりも美しい色合いのように見えた。ことりは今、脚も肩も鎖骨も腰も晒していた。それ以外の部位は服がかぶさって見えない。

俺はことりのシャツを思いっきり引き裂いた。派手な音と一緒に下から現れたのは真珠色の肌。俺は堪らなくなってことりの上にのしかかった。

足音―――確実にここ、リビングに向かっている。音夢だ。如何にすべきか思案を展開させる前に突然ドアが開いた。俺はそのままの体勢でドアのほうを凝視した。

「なっ……」

絶句。案の定、入ってきたのは音夢で、音夢は驚きの表情を浮かべていたのも束の間、すぐに憤怒と戸惑いを露わにした。

「………………」

音夢は俺たちのほうを見ても、無言で出て行ってしまった。

後悔。自戒。落胆。絶望。俺の意識の黒い焔は鎮火し、ことりのことも放って俺は家から飛び出した。


































気が付けば、さくらの時と同じ。俺は桜公園の高台にいた。

思えば、つい先日から闇の恫喝は全く聞こえなくなった。俺が呼びかけても、一切返事は返ってこなかった。手に握ったビンにはさくらに

もらった薬が三錠しか入っていなかった。この二週間ほどで、八十近くあった錠剤は切れかけていた。

俺は残りの三錠を手に転がすと一気に飲み下した。

意識が明瞭になり、思考は限りなくクリアになった。そしていつものように現れる俺の中の黒い欲望―――黒い焔。

突然雷に打たれたような衝撃を感じた。全てを悟った。全てが繋がった。全てを理解した。何故俺から分離していた闇の意識は姿を消したのか。何故女を拒絶していた俺が急に病的なほど欲するようになったのか。そして、この薬の正体がなんなのか。

「さくら……なんで。どうして」

確かめなければならなかった。俺はもう一つ悟っていた―――自分の死期。薬を使って覚醒させた意識は、薬効が切れると眠ったように、死んだようにダウナーになる。薬を使った代償。俺の死期はもう数えるほど。死ぬ前に事実を確かめなければいけない。


































「さくら!!」

さくらは自分の家にいなかった。俺は探し回った。さくらを見つけた場所は島を一周して桜公園の高台だった。どうもここに縁があるらしい。

「おにいちゃん。ボクを探してたってことは…気付いたんだね。おにいちゃんはなんだかんだ言って頭良いんだもん」

「ああ。さくら、この薬抗鬱剤だろ。しかもこの前特許出願したけど、依存性の高さと成分が覚せい剤に酷似している事から、特許を取る事ができなかった、お前の新抗鬱剤だ」

「………どこまで分かってるかと思ったら、もうほぼ全て理解してるんだ。そうだよ。ボクが作ったその抗鬱剤は、鬱病に高い確率で併症となる分裂病、今の言い方をしたら精神統合失調症だっけ。その精神統合失調症まで抑えるんだ」

「俺の、あの闇の意識は突然生まれたんじゃなくて、俺自身だってことだな?」

俺の確信めいた問い。さくらはゆっくりと頷いた。

「うん。あの欲望にまみれた邪悪な意識はおにいちゃんの物だよ。おにいちゃんにどうして薬を作って欲しいのか聞いた時、ピンときた」

さくらの言葉は淡々と抑揚なく響いたが、その表情は悲しみに曇っていて、思いつめている様子がわかる。

「ってことは、あの抗鬱剤で闇の意識を俺の中に戻したが故に、闇の意識の欲望は俺の欲望となったわけだ」

自嘲めいた薄い笑み。笑わないと自分が発狂してしまいそうで怖かった。

「何故、俺を壊した」

「そうだね。結果的にボクはおにいちゃんを壊してしまったことになるのかな。おにいちゃんの残りの時間はもう数日。知らなかったでしょ?ずっと外にいたから心肺に多大な悪影響を及ぼしたんだ」

自分の死ぬまでの時間を告げられても、不思議と穏やかな気分だった。自分自身。あと何日ももたないのは知っていたからかもしれない。

「いや、知ってたよ。俺はもう三日ももたない。俺の身体だぞ。俺が一番分かる。だから聞かせてくれ―――何故俺を壊した」

さくらは憂いを帯びた表情になった。葛藤。話すべきか話さぬべきか。意を決した表情。俺のよく知るさくらの表情。

「ボクはおにいちゃんを、純一君を愛していた。多大な欲望を持て余すようになれば、きっとボクのことも壊しに来てくれる。そう思ったから。ごめんなさい」

さくらの瞳は涙で潤い、堪え切れなくなった一粒二粒が陽光を反射させながら垂直に落ちた。

―――だから言ったろう。この女はお前を愛しているのだと。

貴様。俺の中に消えたんじゃなかったのか。

―――俺はあの時の闇じゃねえよ。お前だ。お前自身だ。俺はお前であり、お前は俺だ。二人は同化したんだよ。あの薬のおかげでな。

そうか。お前は消えるんじゃなく俺の中に存在し続けるのか。あの時訴えていた浮遊感は俺の中に取り込まれかけていたからだな。ならば、教えてくれ。俺はこれからさくらを壊そうと思う。が、お前はどうだ?

―――そんなもん、お前の好きにしたら良い。お前の意志は俺の意志だ。俺に決定権は無い。全ては主たるお前が握っているんだ。

「さくら……俺に壊して欲しいか?」

嗜虐的な笑み。俺の思考を構築するのは俺自身の黒い焔。

「おにいちゃん……」

怖がりながら、さくらは悦んでいた。歪んださくらの想い。今の俺には何よりも神聖な愛の形に思えた。

幾度となく足を運んだ桜の巨木。これまでに無い強烈な既視感を覚えつつ、さくらを桜の幹に追い込んだ。

「おにいちゃん…怖い…そんな怖い顔しないで」

恐怖を訴えているさくらの顔は、明らかに悦に入っていた。さくらを心底怖がらせてやりたくなって、俺はさくらに強引に身体を寄せて唇を重ねた。

衣服を一枚剥がすごとに見えてくる柔肌は、俺をたまらなく掻き立てた。

そっとさくらの柔肌を愛でる。甘美な吐息を独占したくて俺は執拗に愛撫を繰り返した。

さくらは次第に俺に愛撫を強要するようになった。さくらに俺の愛の痕を幾つも刻んだ。

さくらの恥丘はたおやかな曲線を描き、一本の溝まで緩やかに流れる。指を突き立てた。

抵抗なく指を受け入れたさくらは、さらに嬌声を高くした。欲望は加速し、止まらない。

一度俺を受け入れたさくらの秘所は、蕩けるほどに濡れている。愛液は溢れ続けていた。

舌を這わせた。指を巡らせた。粘着質の水音は、俺の思考を麻痺させる。しびれさせる。

もう拒むことのないさくらに自身をあてがい、一気に貫いた。そのまま抽送を繰り返す。

ただ、お互いを愛して行為を貪った。絶頂を迎えるときも一緒にと誓った。誓いは守る。

終焉。俺の歪な欲望は余すことなくさくらに打ち付けられた。至上の快楽が俺を包んだ。

―――どうだ、俺はお前であり、お前は俺だったんだ。俺の欲望は、お前の欲望なんだ。

ああ、それを悟るのに時間が掛かったけどな。毛嫌いしていたお前が俺自身だったって分かった時は狼狽したぞ。

俺の意識が黒く燃え上がる。黒い焔は地獄の業火と化し、俺の胸を焼き続けた。

「くっ……」

俺の胸部は焼かれてるように痛む。早い。早すぎる。もう少し、あと少しだけ生きていたい。

地獄の業火は際限なく燃え広がり、焔はついに思考回路までもを飲み込もうと猛った。

「おにいちゃん……?」

「さくら、一言だけ。俺の顔なんか覚えてなくていい。最後に一言だけ」

――――――愛してる。愛してた」

――――――漆黒の焔は俺の視界も、意識も、思考も、感覚も、記憶さえも吹っ飛ばした。






































thank you for reading this dark novel




















after story

レクイエムを奏でよう。この島で誰よりも愛され、愛した少年の為に。

皆何かに決別したようにその表情は毅然としている。ボクは知っている。ボクも含めたこの子達は、もう泣かないって、もう悲しまないって決めたんだ。

皆が皆少年を愛していた。愛する人を送るのに涙顔じゃ失礼だといったのは、意外な人物だった。

「あの、みんな泣くのは今日までにしましょう?」

おにいちゃんの家にはおにいちゃんを慕っている人皆が来ていた。杉並君も、このときばかりは涙腺を少しは緩ませていた。

「兄さんを送り出すのに皆が泣き顔だと、兄さんのことだから余計な心配しちゃうから」

そういうとおにいちゃんを囲んでいた人たちは笑った。ボクもなんだかお兄ちゃんに内緒で集まっているような気がして可笑しかった。

そんなことがあって、今日、おにいちゃんのお通夜。もちろんボクは音夢ちゃんの言葉を覚えていた。だから、今日は絶対に泣かないと鏡の前で誓った。

周囲を見渡しても、瞳が潤んでる人は居ても公然と泣いてる人は居ないように見えた。

そうして式は滞りなく進み、おにいちゃんと親しい間柄にあったボクたちは音夢ちゃんの申し出で、顔を見せてもらった。

「……反則だよ…おにいちゃん……」

おにいちゃんの顔は苦痛でもなく、悲しみでもなく、ただ、柔和な無表情だった。無表情というと冷たい気がするけど、違う。ほんのわずか口元には笑みを湛え、優しげな無表情だった。

ボクはもう、限界だった。もう目尻には溢れんばかりの涙が溜まっていた。ボクの他にも、すすり泣いてる人がいた。

この表情を作るのにどれだけ苦労しただろう。胸の激しい焦燥感と痛みに耐えながら、決して顔は歪めない。

「うっ、ううぅ……おにい、ちゃ…ん」

臨界点を突破した。ボクの目からは正しく滝のように涙が零れ落ち、頬を濡らし、おにいちゃんの手の甲に落ちた。

「私、歌います……もうすぐ出番です。皆さんしっかり聞いてください。お願いします」

ことりちゃんは真摯な表情でそうとだけ言うと、もう、おにいちゃんに所縁のある人しか居ない式場の前にある壇上に立った。

――――――

ただ人を愛し人に愛されるためだけに生まれてきた人を知っています
そのひとは常に身近に居てそれでいて遠くて誰からも愛されていた

分け隔てない愛は嫉妬を呼び差別のない慈愛も嫉妬を呼んだ

私もまた彼の愛に嫉妬し優しさに嫉妬した全ては彼の魔法

見開け瞳
沈まれ喧騒
澄ませ聴覚
ここに居る人
彼こそが私の愛した男の子

誰からも愛された彼は優柔不断でユルユルしていたことを知っています。
皆が皆彼を愛すが故彼の周りには嫉妬ばかり

愛想をつかしたのかしら彼は遠くへ飛び去ってしまった

私の願い
彼がまた私の前を歩いてくれること
彼の願いも
私と彼が結ばれることだったら幸せだな

全ての人が願ってる

彼には生きていてほしい

全ての人が願ってる

この恋が叶ってほしい

レクイエムを捧げよう

私が

この島の誰もが愛した

なによりも神々しかった少年のために―――

会場にいた全ての人が涙していた。

ことりちゃんの素直な気持ちに。おにいちゃんが居ないという事実に。自分の根底にある気持ちに。

「レクイエムは葬送曲の意。白河嬢はプロ並みの歌声と聞いていたが本当だったようだ」

「違うよ、杉並君」

「?」

「レクイエムは葬送曲だけど、鎮魂曲っていう意味もあるの」

杉並君はまいった、と呟いてそのまま顔に手のひらを押し当てた。指の間から何か雫のような物が零れ落ちたのがボクにははっきり見えて

いた。

棺が閉まる前に皆で見たおにいちゃんの顔にはどこか安らぎが感じられたのは、ボクの勘違いかな。




     さようなら、おにいちゃん―――――

―――――また、逢おうね。






















俺の名前は、朝倉純一?

「違うよ、君は桜内義之っていう名前なんだ」

でも、朝倉純一って言う名前が記憶の中に残ってるんだ。

「それはもちろんだよ。君はおにいちゃんの中から生まれたんだから」

俺の兄貴なのか?純一って。

「違うよ。君の生みの親だよ。もう死んじゃったんだけど」

そうなのか……会いたかったな。

「今に会えるよ。ボクは魔法使い。何でもできるんだから」

「そう……死者にだって……ふふふっ」

え?何か言った?

「ううん、なんでもないよ。それよりこれからが楽しみだね、義之君」



黒い焔を持つ者はどこにでも居る。それが男かどうかは分からないし、いつ焔が燃え始めるか分からない。

焔の物語はまた冒頭へ戻る。人間の意識を、思考を喰らわんと、欲望という灼熱を以って人間を喰らい続ける。






after story end.........



















あとがき

疲れたー↓↓
つーか、マジで大人になる前に脳内麻薬使い切りそうですww
こんな暗黒な小説誰が読むんだろう^^;
いつも読んでくれる人は一人の友人だけだし。。(他の人には読ませられません。暗すぎます。)
あえて批評を浴びたくて投稿してみました。

疲れる。死ぬ。逝く。亡くなる。

やめたいけど、やめられない。闇黒ダ・カーポは楽しい(ぇ

こんな駄文を読んでくれた全ての人に感謝と謝罪をします。