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※前回に引き続き、かなり電波に犯されています。
 閲覧の際には十分に注意してください。




















    アンテナの話








 昼休み、いつも通り屋上前の階段の踊り場で舞と佐祐理さんと一緒にお昼を食べ終わった後、ふと気付いた事があった。

「そういえば俺の周りにはアンテナが立ってる女の子がいないな……」

 別名、アホ毛だ。
 そう、俺の周りの女の子達にはアホ毛持ちの子がいない事に気付いた。
 桜の咲き乱れる島の広辞苑で兄を起こす少女然り、パクリだらけのロボットアニメの最新作のヘタレな赤いメカ乗りのストーキング少女然りだ。

「どうしたんですか、祐一さん?」

「いや、気にしないでくれ」

 佐祐理さん一人が気にした所で現状が変わる訳ではないのが現実だ。

「そういう訳にはいきませんよ〜」

 む、食い付かれてしまったか。

「それで、アンテナって何ですか?」

 下手に誤魔化すよりも素直に教えた方がいいだろう。

「ほら、こういう感じに髪の毛がピンと立ってるとアンテナみたいだろ?」

 そう言って、髪を一房真上に持ち上げる。

「ああ、それなら北川さんがいるじゃないですか」

「いや、男にあっても萌えないから却下」

「萌え……ですか?」

「いや、気にしないでくれると嬉しい」

「はい、わかりました」

 ふむ、こう言うと佐祐理さんは引き下がってくれるのか。

「では、佐祐理が試してみますね〜」

 何!?佐祐理さんがアホ毛を装備してくれるのか!

 佐祐理さんはポケットからゴムを取り出すと髪を一房真上に向けて留める。

「どうですか?」

 ……なんていうか……

「おまじないしますか?とか言っちゃダメだから……」

 ま、そんな訳だ。
 ネタも一杯出回ってるし。

「そうですか……」

 佐祐理さんを落ち込ませてしまったようだが、資料室のおまじないマニアとキャラを被らせるよりはマシだろう。

「じゃ、今度は舞だね〜」

「……わかった」

 舞のアホ毛か……
 ……これは新鮮じゃないか?

 佐祐理さんはさっきのゴムで手早く舞の髪を真上に向かって留める。

「……どう? 祐一」

 舞は少し顔を赤らめながら上目遣いにこちらを見ている。

 ……

「どうしたの? 祐一」

 …………

「祐一さん?」

 ……………限界です。

「も、萌えーーーーーー!!!!」

「…………!!」「きゃっ!!」

 っと、落ち着け、俺!
 いつもの紳士な俺を思い出すんだ!

 ………

 ……ふぅ。
 よし、もう大丈夫。

「二人ともごめん」

「びっくりした」

 ……大体今のは舞の表情に萌えただけだ。
 今度はアホ毛付きの舞を見なくては。

「……どう?」

 改めて訊ねてくる舞。だからその表情が……
 耐えろ!耐えるんだ、俺!

「祐一、どうしたの?」

 舞の表情が段々曇っていく。
 眉間にしわを寄せて……
 ん? どっかで見た事があるような……

「佐祐理さん、ちょっと舞のポニーテールを隠してみて」

「わかりました〜」

 あとは……

「ちょっと待ってろ、すぐに戻るから」





 演劇部から目当ての物を拝借して戻ってくる。

「ほら、これを持ってくれ」

「わかった」

 舞は素直にそれを受け取る。

「やっぱり………」

「何に似てるんですか?」

 薙刀持ったトンガリ頭のチャイニーズ少年にちょっと似てる。
 ……本人に言うと怒るかもしれないけど。
 いや、その前に元ネタを知らなさそうだなぁ……
 ……よし、言おう。

「舞、『中華斬舞』って言ってみて」

 ………あ、やっぱり黙り込んだ。

「……わかった」

 そう言うと、舞は呼吸を整える。

「ゴールデン………」

 ……え? 何でこっちに薙刀向けてるの?
 しかも「ゴールデン」って………しっかりわかってらっしゃるじゃないですか!?

「中華斬舞!!!」

「うぎゃぁぁぁっ!!!」





 ……その日の午後の授業は全部保健室で過ごしました。

 いや、薙刀自体はそんなに痛くなかったんだけど、避けようとして階段から落ちたんだよ。




 もうアホ毛の話をするのはやめようと心に誓ったある日の昼下がりだった。













     後書きのような物ですが何か問題でも?

シロ「あ〜…… 気持ち悪ぅ……」

佐祐理「どうしたんですか?」

シロ「なんか数日前から体調が優れないんだよ……」

舞「普段の不摂生な生活が悪い」

シロ「……まぁそれはわかってるんだけどさぁ……」

佐祐理「お体を大事にされたほうがいいですよ?」

シロ「それもわかってる……」

舞「こんな物を書いてる場合じゃない」

シロ「う゛……」

佐祐理「舞〜、そんな事を言っちゃダメだよ〜」

舞「間違えた事は言ってない」

佐祐理「確かにそうだけど……」

シロ「俺なんかどーせ……」

佐祐理「ほら、シロさんもむこうで心の迷宮に入っちゃったみたいだし……」

舞「放っておけばいい」

佐祐理「そんな事言わないで〜」

シロ「あ!」

佐祐理「どうしたんですか?」

シロ「服が前後逆だった………」

舞「……」←無言で剣を構える

シロ「えっと……どうしたのかな? 舞サン……」

舞「私はつまらないオチを斬る者だから……」

シロ「あ、いや、別にオチのつもりじゃなくて普通に間違えてただけだから……」

舞「問答無用」

シロ「ちょ、ちょっとまって……うぎゃぁぁぁ!!!」







佐祐理「え〜っと……服の前後は本当に間違えていたみたいですよ?」