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◆Delicate Affection

「しまった。私としたことが人形用の材料を切らすとは……」
 足りると思っていた材料が途中で無くなるという自身の不手際を呪う。
 もっと、小まめに買い置きしておくべきだったかしら……。
「調子がいいのに、ここで作業止めるのも……日が暮れかけてるけど行くしかないかしらね」
 私が考え込んでいると、上海が外出用の準備を持って私の傍に寄って来た。
 私の考えている事がわかるなんて、本当に良くできた娘だわ……。
「じゃ、上海。行こうか」
 上海の髪を優しく撫でてあげると、なんだか嬉しそうに体を揺らした。
 私は上海とともに少し急ぐように家を出た。

      ♪

「これで材料は揃ったから、後は帰って続きを……」
 手元のメモと買った物を見比べて、買い逃しが無い事をチェックして呟く。
「アリス」
 突然、後ろから名前を呼ばれたので、振り向く。
 振り向いた先では紅い悪魔、レミリアが立っている。
 もう外は日も暮れ、闇の眷属の世界となっているが、いくら夜とはいえ人里にレミリアがいるのを見るのは初めてだ。

「なんで、アンタがこんな所にいるのよ……ここは人里よ……人でも襲う気? ま、そんなことしたら、霊夢とか、慧音が黙って無いだろうけど」
 私は呆れ顔でレミリアを見る。
「そんな事、するわけ無いでしょ」
 レミリアもやれやれといった感じで腰に手を当てて、こちらを見てくる。
「これから神社で宴会。そして、私は足りないものを買いに来ただけ」
「またやるの? 前から日がまったく開いてない気がするけど……それはいいとしても、買い物ぐらい貴女の所のメイドにやらせなさいよ……」
「咲夜は忙しそうだし、私が仕方なく」
「全く……」

 頭を振ってやれやれと呆れる。このお嬢様一人で買い物なんて、無理でしょうが……。
 何を考えてるんだか、霊夢は……。
「で? 何を買いにきたの?」
「お酒とか……食材とかかしら?」
 レミリアはメモを取り出して、確認しながら言う。疑問符で台詞を話している所からして、ものすごく不安だ。

「そう……じゃ、行きましょうか」
「え?」
「私も一緒について行くわよ。アンタ一人じゃ、店の人が可哀想だわ。それに……」
 チョイチョイと指をさすと、レミリアはその方向を見る。
 里の人は畏怖の眼差しでレミリアを見ている。
「お願いするわ」
 レミリアは疲れた様に深く深くため息をついた。

     ♪

 買い物が終わったのはいい。
 それはいいのだが……。

「どうして、私が買った物を持たなきゃいけないのよ!」
 すでに自分で買った人形の素材とレミリアの買い物分で手一杯になっている。
 上海は心配そうに私の周りを飛び回っているが、悲しいかな。この娘では、重量的に持てないのよね……。
「どうして、私が持たなきゃいけないのよ」
「自分が買い物に来たんだから当たり前でしょうが!」
「はぁ、まったくしょうがないわねぇ……」
 不承不承といった感じで、レミリアは私の手の中から宴会用に買った物を抜き出して、持つ。
「どうして私がこんな事をしなきゃ……」
「だったら、買い物に来ないでよ!」
 ぶつくさと文句を言い始めたので、思わず突っ込んでしまう

「ところで、アリス?」
「何よ。荷物を持つのは手伝わないわよ」
 レミリアの身長的には大きい荷物を持ちにくそうに、持ち方を色々と変えている。
 少し不憫になり手伝おうかとも思ったが、吸血鬼なのだから大丈夫かと、思い直しとどまった。
「荷物の事はもういいわよ。宴会の事だけど、貴女は来ないの?」
「一応やる事あるし、そもそも呼ばれてすら無いわよ」
 私は肩をすくめる。

「呼ばれて無い? 幹事役の魔理沙が不手際とは珍しい……」
 レミリアはそこまで言ってから、少し考えこむ仕草をする。
「ま、毎度宴会に出てもそこまで飲むわけじゃないし別に……って、話聞いてるの?」
 全くこちらの話を聞いていない様なので、レミリアに確認を取ると、突然。
「さぁ、一緒に神社に来てもらうわよ」
 レミリアは私の服を手に取り、グイグイと引っ張る。
「私に拒否権は無いのーッ!」
「少なくとも私の前では無いわね」
 レミリアは無理矢理ずるずると引きずっていく。
「あーもう、わかったから、服を引っ張るのは止めて! レミリアの力で引っ張ると破けるから!」

     ♪

「あら、もう始まってるわね」
「あら、レミリア! 遅かったじゃない、もう始めちゃってるわよ」
と、頬を赤く染めてもう既に出来上がりかけてる霊夢。
「あら、アリス? そう言えばいなかったわよね? 何してたの?」
「そもそも呼ばれて無いのだけれど……」
 霊夢はレミリアの後ろにいる私に気づいて声をかけるが、私はリアクションに困って、呆れた様に顔を強張らせる事しかできない。

「…………」
 霊夢は少し考え込むような仕草をする。
「ちょっと!! 魔理沙ッ!」
「んー、なんだー?」
 霊夢に呼ばれ、パチュリーに絡まれている魔理沙はパチュリーを無理矢理引き離して、やって来る。
「アリスを呼び忘れたでしょ!!」
「あれ? アリス? ……うーん……ハッハッハッ、そう言えば呼ぶのをすっかり忘れてたぜ!」
「忘れてたじゃないわよ!」
 霊夢が魔理沙に大袈裟なドツキを入れている。どうやら、完全に酔っているみたいだ。
「ついてきたのは失敗だったかしら?」
「はははははは……」
 私の先行きに一抹の不安を抱いた一言にレミリアは乾いた声を上げていた。

      ♪

 少し離れた宴会場となっている部屋の方からは大きな笑い声やら、怒声やらが色々と聞こえてくる。
 宴会の雰囲気にどうも馴染めない私は宴会部屋からは離れた縁側で一人、月を見ていた。
「ふぅ」
 勝手に瓶ごと拝借してきた果実酒をコップから一口飲んで一息つく。
上海が空いたコップに新しくお酒を注いでくれる。
「御酌をしてくれるのは嬉しいけど、貴女じゃ相手にはならないわよね……」
 上海人形の頭を撫でながらポツリと呟く。

「なら、私と一緒に飲みましょうか?」
「え?」
 声がした方向を振り返ると、月の蒼い光に照らされたレミリアが笑みを浮かべている。
「月が綺麗よね」
 そう言って、私の隣にまで来て、縁側に腰掛けるように座る。
「どーして一人で飲んでるのよ……相手がいないのなら私が付き合うけど、どう?」
 呆れて。そして、芝居がかったような口調で手に持った、ワイングラスをチラつかせる。
ワイングラスには血のように紅いワイン。レミリアらしいと言えばレミリアらしいが。
「では、お相手願おうかしら」
 上海がいれてくれたコップとレミリアのワイングラスを当ててレミリアの誘いを受けた。

     ♪

「上海。また貰えるかしら?」
 上海の前にコップを差し出すが、上海は首を横に振る。
「空っぽみたいね……」
 レミリアは上海の手から、瓶を取って、月の光にかざして振っている。
「あら? じゃ、あっちにまでお酒を取りにいく? それとも、このままお開きにする?」
「取りに行く必要は無いわ……これ飲んでみない?」
 そう言って、レミリアはどこからか徳利を取り出す。
「これは……何のお酒?」
「宴会場から、勝手にもらってきた秘蔵のお酒」
「勝手にって……いいの?」
 自分も勝手に持ってきているので、大きなことは言えないが。
「大丈夫、大丈夫」
「滅多に日本酒は飲まないのだけれど……ま、いいわ。付き合いましょう」
「そうこなくっちゃね」
 レミリアは続けて、お猪口を二人分取り出し目の前に差し出した。
「さ、飲んで飲んで♪」
「悪いわね」
 レミリアは上機嫌で私の分と自分のお猪口に徳利の中身を注ぐ。
「何に乾杯する?」
「……そうね。では、アレに」
 少し考えて、夜空に浮かぶ満月を指差す。
「では、満月と人形遣いに乾杯」
「って、何で私まで加わってるのよ!」
「何か不満があるかしら?」
 さも当然というように、小首をかしげる。
「はぁ……乾杯」
 いつも通りのマイペースで我侭なお嬢様に対してのため息をつきながら、お猪口のお酒を一気にあおった。

     ♪

 それから、しばらく二人で月見をしながら飲み続けた。
 時間が経てば経つほど、なんだか頭がフラフラしてくる。
「うーん。お酒にはそこまで強くないけど、ここまで酔うほど、飲んでないはずなんだけど……」
 少し辛いので少しは楽になるだろうと、頭を柱に預ける。
「う〜ん、アリスには強すぎたかしらね」
「……それはどう意味よ」
 レミリアが聞き捨てなら無い事を言い出したので、ジト目で見つめる。
「あのお酒は、チビ鬼から少し分けて貰ったお酒で……ごにょごにょ」
 レミリアはバツが悪そうに、言葉を濁す。
 鬼の酒なんて、酒に強くない私からしてみれば、たまったものじゃない。
「う〜〜〜〜。頭がぁぁぁぁぁ」
 そうこうしている内に、酔いがどんどん回ってさらに気持ち悪くなってくる。
「大丈夫?」
「大丈夫な訳が無いでしょうが……」
 仕舞いには、もたれ掛かっていた柱とは逆方向。つまり、レミリアの座っている方へと倒れこんでしまう。
 頭が倒れこんだ先は冷たい床の感覚では無く、なんだか柔らかい感覚だった。
「?」
 頭の痛みで瞑っていた目を開けると、眼前にはレミリアの顔が。
 ……………。
 倒れこんだ先のやわらかい感覚。目の前のレミリアの顔。その上で、導き出される状況は……。
 これは俗に言うところの、膝枕というモノかしら?
「ごっ、ごごごごごめんなさい」
「別に気にしないから、そのままでいいわよ」
 慌てて起き上がろうとするが、それをレミリアが制した。
「なら、お言葉に甘えるとしようかしら」
「甘えておきなさい。お酒を持ってきて勧めたのは私。気にする事は無いわ」
 ボーっとした頭でぼんやりと夜空に浮かぶ月を見ていたら、唐突にレミリアが私の髪を撫で始めた。
 嫌ではないが、なんだかムズ痒いと言うか、くすぐったい。
「ちょっと、くすぐったいわよ」
「いいから、いいから」
「答えになってないわよ……」
 特に振り払う理由も無いので、レミリアの好きなようにさせていたら、なんだか眠くなってきた。
 髪を撫でられている感覚が安心させるのか、頭が酔っている事とは別にボーっとしてくる。
 いつの間にか酔いの気持ち悪さはどこかにいっていた。

     ♪

 ふと意識が覚醒する。
 どうやら、あのまま寝てしまったらしい。
「あれ? 私は……」
 縁側の固い木の感覚ではなく、柔らかくてどこか慣れた布の感触がする。
 起き上がると、ご丁寧にベッドに寝かされていた。
 よく見ると、人形が置かれた見慣れた部屋……どうやったか知らないが、自分の家に戻ってきたらしい。
「あら? ようやくお目覚め?」
「うわぁ!」
「何よ……そこまで驚く事無いじゃない……」
 レミリアは驚かれた事に対して、不機嫌そうな顔をしながら本から顔を上げる。
 照明も点けずに本を読んでいたが、目を悪くしないのだろうか? と思いもしたが、吸血鬼だから関係ないかと思い直す。
「家まで送ってくれたの?」
「そう。わざわざ、この私が運んであげたんだから感謝しなさいよね」
「本当に意外ね。貴女がそんな面倒なことをしてくれるなんて」
「この人形が私の袖を引っ張るからね」
 そう言って、いつの間にかレミリアの肩に乗っている上海の頭を撫でる。
「今日は随分と優しいじゃない?」
「ただの気まぐれよ」
「そうでしょうね」
「露骨に返されるとなんだかムカつくわね」
 レミリアは不機嫌そうに頬を膨らませる。
「あははは、ごめんね。家にまで運んでもらってありがとう」
 ちょっとからかい過ぎたことを謝って、素直にお礼を言っておく。
「うっ、別にそこまで感謝される事はやってないわよ」
 レミリアは照れ臭そうに頬を染める。
「ん、ちょっと待って。どうやって、家の中にどうやって入ったのかしら? 確か出かける時に鍵は閉めたはずだけど……」
「そこは、鍵を探すためにアリスの服の中を探させて貰ったわよ」
 わきわきと、レミリアはオジサンくさい手つきをする。
「う……もしかして、胸触ったでしょ」
 直感的な予感で自分の胸を守るように手で隠す。
 心なしか恥ずかしさのあまりに体温も少し上がったような気がする。
「さぁ、想像に任せるわ…………貴女、見かけによらず結構大きいのね」
「しっかり、触ってるじゃないの!」
「さて、そこまで大きな声を出せるって事は体調はもう元に戻ったって事よね?」
「確かに快調だけど……って、誤魔化されないわよ。人の胸を揉むなんてどういう……」
「折角だから……」
「だから、人の話をちゃんと……」
「貴女の噂の人形劇でも見てみたいわ」
「勝手に話を進めて、言う事に欠いて、人形劇をみたいなんて」
「噂の素晴らしい人形劇を見てみたいだけなのだけど?」
「……素晴らしい?」
 悲しい事にその単語にピクリと惹かれてしまう。
「それはもう良いものだと聞いたのだけれど、家に運んだお礼として、見せてくれないかしら?」
「しょ、しょうがないわねぇ。そこまで言うなら……」
 なんだか乗せられた気もしなくないが、ベッドから下りて月の光が差し込んでいる窓際に立つ。
「では、まず手始めに」
 酔い覚ましと眠気覚ましを兼ねて軽く人形を動かし、ウォーミングアップをしてみる。
「ま、こんなものかしらね。じゃ、始めさせてもらうわよ」
 人形を操って、観客であるレミリアに向かってお辞儀をさせる。
「マーガトロイド人形劇の始まりです!」





◆あとがき
掲載その3!
大本はオフセ『Delicate Affection』からのレミアリSSなんですが、レミアリ総集編として再録したものです。

タイトルは聖剣なゲームの三作品目のBGMタイトルから。
アリスを酔わせたい!という思念のもと書き始めた作品ですが、なんだか微妙……。
もう一度アリスに飲酒というテーマで書いてみたいですね。
(08/12/6)

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