私のせいだ……私がお父さんやお母さんにあんな……あんな事を言わなければこんなことにはならなかったかもしれないのに……。
怖い……私の言葉で誰かを傷つけてしまうのが……。
サイレント・ヴォイス
これが最後の種だ。
……今度こそ咲かせて見せる。
そう心に誓って私は種を蒔いた。
葉が少し枯れているのを見る限り、順調とは言いがたいが今度こそうまく良くかもしれない。
花を咲かせて見せて……。
そして、私の願いを、叶えて……。
今日も独りでロスキルラベンダーの世話をする。花を咲かせ見せてくれるように。
日曜日の学校で何をやっているんだろうという疑問も少し湧くが、そんなことは考えてはいけない。
私にはコレしかないのだから……。
いつもの様にロスキルラベンダーの世話をしていたら私服姿の男の人が話しかけてきた。
その人は「自分はこの学園の生徒だ」と言っていたが、どんな用事だったんだろう?
取りあえず話しかけられたので、ピロスを使って、二言、三言話したが私はその人から逃げてしまった。
家に帰ってから分かった事だが、どうやら私はあの場所に生徒手帳を忘れてしまったらしく、話しかけてきた男の人、朝倉先輩は天枷さんと一緒に生徒手帳を家に届けてきてくれたらしい。
朝倉先輩……噂には聞いている。
去年の卒業パーティーやクリスマスパーティーで騒ぎを起こした実行犯の一人らしい。
現に白河先生や他の先生が、「三年の朝倉や杉並のようになるな」って言ってるぐらい。
そんな噂を聞いて、変な先輩なんだなと思っていたら、やっぱり変な先輩だった。
私がロスキルラベンダーの世話をしている体育館裏によく現れる。
どうも、私に会いに来てるらしい……ううん、ピロスの事を不思議がって来ているのかもしれない。
少なくとも、杉並先輩はそうみたいだし。
でも、不思議。
大抵の人はピロスが話すと驚くものなのに、朝倉先輩は自然に話しかけてくれる。
どうしてなんだろう?
どうして?
どうして、私にいつも会いに来るの?
最初の頃は疎ましく感じていたはずなのに、何故か先輩が居ることが日常になっている。
先輩といる時間が心地よく感じている自分に気づく。
先輩にとって私は、私にとって先輩はどんな存在なんだろう?
自分の気持ちはまだよく分からないけれど。
まだ、焦って答えを探す必要は無いだろうと思う。
ゆっくり、ゆっくり、考えて答えを出せばいい。
そう考えていた。
先輩がこの花、ロスキルラベンダーの名前を知ったらしい。
先輩は先輩の知り合いから聞いたらしく、先輩はこう言った『ロスキルラベンダーの花が咲かないかも』と。
そんな先輩の言葉を私は必死に否定した。
私にはロスキルラベンダーしかないから……。
本屋に買い物に行った時に、バッタリと先輩に会った。
その帰りに、先輩が『ロスキルラベンダーの花が咲かないかも』と言った事を謝っていた。
その事は気にしていなかった。
だって、先輩は悪気があってそんなことを言ったりする人ではないから……。
そして何より、その事を話している時の先輩の顔が辛そうだったから。
雨と風が吹き荒れている。
初音島に豪風雨が来た。
私はその天気を見るや屋敷の外に飛び出した。
ロスキルラベンダーを守る、その気持ちだけで独りでそばにいて、花が飛ばされないように守っていると何故か朝倉先輩もやって来た。
どうして朝倉先輩が?
そんな考えが頭に浮かぶ。
先輩が私を説得しようとしてくれるが、その時の私には先輩の言う事に耳を貸せる余裕など無かった。
先輩が私の体を雨風から守るように風上にいてくれる。
そう時間も経たないうちに突風が吹き、花を被っていたバケツが飛ばされる。
飛ばされたバケツの跡には風で折れてしまった、ロスキルラベンダーが……。
心が絶望に染まりあがる。
私はボロボロになったピロスを最後に見て意識を手放した。
あんな天気であんな事をしてしまった事が原因で、私は風邪を引いてしまった。
風邪が治ってからも数日私は無気力に過ごしてしまった。
花はもう無い……その事実が私を追い詰める。
3月27日は私の誕生日と言う事で先輩達が来てくれたのに、先輩達とはうまく話せなかった。
よく心に穴が開いたよう、と言うけれど、この状態がまさにそうだと思う。
先輩が心配して、私の部屋まで来てくれたが、私は先輩の言葉には耳を貸せずに先輩を拒絶してしまった。
どうしよう……
商店街に買い物に来たまでは良かったのだが、運が悪い事に足をくじいてしまった。
本当に、悪い事は続くものだと思う。
どうしようかと途方に暮れつつ、ベンチに座っていると、偶然、先輩に会った。
先輩におぶられながら桜並木を歩いている。……おぶられる時には色々あったが。
先輩の背中……、なんだか安心できる気がする……。
夢……。
夢を見た……。
あの時の夢だ。
あんなことを言ってしまった……。その事実が私に人と話す事を戸惑わせる。
そのことを思い出すたびに私は前に進めなくなる……。
どうすればいいの?
朝倉先輩……。
杉並先輩から朝倉先輩が事故にあったと聞いた時は全身が凍りついた。
お父さんやお母さんと同じようにもう二度と会えなくなるかもしれない……。
そんな思いが私の足を早くした。
朝倉先輩が怪我をしていなくて良かった……。
先輩達に一緒になって騙された事より、そんな気持ちので頭の中はいっぱいだった。
騒動の最中には勢いに任せて告白をしてしまったし……。
朝倉先輩は周りの皆さんにからかわれてつつも嬉しそうにしている。
私も嬉しいですけど……。
天枷さん、杉並先輩、水越先輩、瀬場さん…………そして、朝倉先輩。
たくさんの人に私は救われたんですね……。
私は皆さんが手を差し伸べているのに手を取ろうとしなかったのは私です。
それに気づかせてくれた朝倉先輩…………。
先輩とずっと一緒にいたい……。
前まではとても考えられなかった気持ちの変化。
ずっとずっと一緒にいてくださいね?先輩。
後書き、と言う名の寸劇
でっき「どうも、作者のでっきぶらしです。HP製作のために書き上げた第一作目のSS『サイレント・ヴォイス』です。ゲーム本編のアリスサイドをシリアスに仕上げてみました」
アリス「なに、真面目に挨拶してるんです?」
でっき「こういうものは、最初が大事なんだ!ここはビシッと決めないと」
アリス「こんなに短いSSのなのに……」
でっき「ぐはっ、仕方ないだろ!シリアスは書いた事無い上に物書きとしてのレベルもまだ低いんだから!」
アリス「……言い訳に過ぎないのでは?」
でっき「ぐはぁっ!」(吐血
アリス「しかも、タイトルとコンセプトはZZガンダム後半期OPテーマ、サイレント・ヴォイス……」
でっき「そこは問題ないだろ?分からない人もいるかもしれないが、分からなくても読むぶんには問題ない」
アリス「……歌と歌詞に対して失礼」
でっき「そ、そこまで言うか……」(哀
アリス「時間かかりすぎです……この長さにどれだけ時間かけてるんですか」
でっき「ううぅぅぅ、くそーーーー」(泣きながら逃げ出す
アリス「帰っちゃいましたね。少し言い過ぎたかもしれません……」
アリス「最後にですが、こんな作者さんですが、見捨てないであげてください。では」
|