「うみゅう〜」
「むーーーー」
顔も知らない女の子が音夢と俺のベッドの上で睨み合っている……。
「……兄さん。これはどういうことなんですか?」
音夢はニッコリと笑いながら尋ねてくるが、こめかみに血管が浮き出ている……。
激しくマズイ……。
「私というものがありながらですねぇ」
「いや、それが俺も全く知らない―――」
「なら、どうして。兄さんの部屋に女の子が居るんですか!!しっ、しかも、は、はっ…裸で!!!」
音夢は顔を赤くしながら、鬼のような形相で迫ってくる。
「だから知らないんだって!」
「へ〜、そうやって兄さんは白を切りますか……。そうですか、そうですか」
俺は必死の弁明をするが、音夢は全く耳を貸してくれない。
一人で俺があの娘を連れ込んだと納得してしまっている模様。
「だからなぁ……」
世にも不思議な物語
俺と音夢は今年の春に結ばれた。
そのおかげ(?)で桜が枯れてしまったり、さくらが再びアメリカに戻ってしまったりと。
特に俺と音夢が付き合い始めたことに関して、色々と波風も立った。
本当に色々とあったわけだが、今は二人でアツアツ(死語?)とやっている。
日曜は必ずデートとか、夜の方も―――――げふんげふん。
まぁ、そんな春の出来事からそこまで時間も経ってない、六月の事……。
「さて、音夢。帰るとするか」
いつも通りに学校も終わり放課後となり、音夢に話しかける。
「ええ、そうしましょうか。兄さん」
自分の机で帰り支度をした音夢は立ち上がる。
「おっ、朝倉夫妻。もう帰りか?」
「うるさい、黙れ杉並」
俺達の近くに杉並が寄ってくる。
「つれないな。今日は“ムー”の発売日なのが、来んか?」
「絶対に行くか!!」
「おやおや、女が出来てからというもの付き合いが悪いぞ朝倉」
「…………音夢と付き合う前でも断ったと思うが?」
俺はオカルトや超常現象の世界なんぞ興味は無い。
「兄さん……」
「ん?」
音夢が俺の制服の袖を引っ張り、物欲しげな目で見つめてくる。
それは反則だと思うぞ? お兄さんは……
「アツアツですね? 二人とも♪」
「だな」
「ことりさんや……アホと一緒に徒党を組むのはいけませんよ?」
ことりも近くに寄って来て、からかい始める。
あーあ、音夢は顔を赤くしちゃって……。かく言う俺も赤くなってるんだろうけど……。
「うぅ……」
「さて、俺達はもう帰るからな」
「じゃあな、ご両人」
「バイバイっす」
「じゃ」
「では、また明日……」
少しからかうのが目的だったらしい二人組は俺達を見送る。
俺は普通に挨拶を返し、音夢は顔を赤くしながら、声を小さくしながら返事を返す。
♪
「相変わらずだなぁ、音夢」
「だってぇ……」
桜並木を二人で並んで歩く。
前までのように年がら年中、桜吹雪という事は無くなって、今は7年ぶりの青々とした緑が特徴の桜並木になっている。
杉並とことりにからかわれた音夢はまだ頬を赤らめている。
「うぅぅ〜、恥ずかしいよ〜」
「毎度毎度のことだろ?
いい加減に慣れろよ」
ポン、ポンと音夢の頭を軽く叩き、なでてやる。
「髪の毛がぐしゃぐしゃになっちゃうから止めてよぉ〜」
台詞は嫌そうな風だが、手を払いのけず、それほど嫌がっている風でもないので、そのままにしてみる。
♪
「さて、家には帰りついたもののどうするか……」
家の鍵を開けながら呟く。
「素直に勉強でもしてみたらどうです?
兄さん」
「ふっ、そんな話。愚問だな」
「そんな事言ってると、夏休みに補習になってしまいますよ」
音夢はやれやれといった感じで、俺が開けたドアをくぐり、玄関で靴を脱いで家に上がる。
「まぁ、俺はとりあえず着替えるがな……」
「はーい」
♪
バタン
階段を上がり、自分の部屋のドアを開ける。
「みゃ?」
「……………」
見知らぬ女の子が俺のベッドに座っている。しかも、裸で!!
よくよく見てしまうのは、彼女持ちとは言え悲しい男の性か……。
容姿は……なんだか、白い髪とても目立つ娘。
髪は長く腰の辺りまである。
同じく雪のような白い肌。
そして、音夢と同じように首には鈴が……。
我を忘れて、見つめてしまう。裸なだけに……。
「あっ、兄さん。今日の夕飯どうし――」
「あ゛?!」
物凄いタイミングで音夢が部屋に入ってくる。
名前も知らない娘を隠そうとするが手遅れ、もうすでにみられてしまった。
「ようか、聞きに来たのですけど――」
一拍。
「に・い・さ・ん?
何なんですかこの娘は!!!!」
まさしく、1キロ先にも届くような大声で俺は怒鳴られたのであった。
♪ ♪ ♪
「と言う、訳だ。妹よ」
俺は音夢にいかに、俺が唐突な出来事に呆然としていた事を伝えた。つもりだったのだが……。
「ふ〜ん、で!
どこから連れ込んだんですか!!」
説得失敗……。まぁ、分かってたけどね……。
「まぁ、落ち着け」
「落ち着けますか!!」
気を抜いたら殺られる、そんな雰囲気が部屋の中にはしる。
「音夢ちゃん。そんなに純一を怒鳴ったらダメだよぉ〜」
名前も知らない女の子が音夢に進言をする。裸のままだが……。
「じゅ・ん・い・ち〜?」
音夢は物凄いジト目で俺の方を見る。
「ツッコミ所はそこなのか?!
今、お前の事、音夢って呼んでたぞ!」
「……そう言えば、私のことを知ってる?
でも、私はこの娘の事、知らないよ?」
ようやく怒りの刃を納めたらしい音夢は純粋に疑問を浮かべる。
「私はね……」
ピリリリリリリリ♪
「ん?
なんだって、こんな時に電話が……」
ぶつくさ言いながらも、制服のズボンに放りこんである携帯を取り出し、電話に出る。
「やっほー、お兄ちゃん♪」
「さくら?!」
「えっ?!
さくらちゃんからなの?」
音夢は顔を近づけてくる。
「一体何のようだ、こっちは今、立て込んでいるんだ後にしてくれ」
「もしかして、近くに音夢ちゃんいる?」
「ああ、いるが……」
顔をキスが出来るくらいまで近づいてきている音夢に目をやる。
流石にこの距離は少し恥ずかしい。
「はみゃ〜、やっぱりか〜」
「おい、やっぱりって何だ?」
「実はねぇ〜、桜の力が戻ってきているんだよ」
「マジか?!」
さくらの声が聞こえている、音夢も驚きの表情を見せる。
「でも、心配しないで。前のように凄く力が強いと言うわけじゃないから」
「ちょっと待て。お前、今どこにいるんだ?」
「えっ?
今はアメリカの大学の研究室だけど?」
「そんな遠くにいるのに分かるのか?」
「当然だよ〜、ボクは魔法使いなんだから。まぁ、お兄ちゃんもだけどね♪」
「その話はいい。桜の力が戻り始めているけど、そこまで力は強くない。なら、どうして問題なんだ?
影響が無いなら、わざわざ電話してくるほどの事じゃないだろう?」
「影響が無いならそうなんだけどね〜。今回はそうもいかなくて……」
「何か問題があるのか?」
「うん。ボクが桜を無理やり枯らしちゃったからね、少し桜のシステムに問題があってね……実は、うみゅ〜」
「実は?」
「う〜ん、言った方が良いのかな?
でも……」
「さっさと言ってくれ、かったるい」
「実は桜の魔法の力が全部うたまるの方にいっちゃったんだ」
「うたまるに?
どうして?」
「ずっと、ボクの近くにいたからじゃない? 詳しくはわかんないや。エヘヘ〜」
「エヘヘ〜、じゃないだろ!
どんな問題点があるんだ」
「え〜と、うたまるの体に変化は無い?」
「今、うたまるは近くにいないんだが?」
「え〜、いる筈だよ?
音夢ちゃんがカンカンだったなら」
「…………もしかして」
受話器から手を離して、例の女の子の方へ目をやる。
受話器からの声が聞こえていたらしい音夢も俺と同じ方向へ顔を向ける。
「ん?」
女の子は軽く首をかしげる。
「そういう事なので、よろしくー」
電話の受話器先から無責任な声が聞こえる。
「さくら、ちょっと待て!
これを俺達にどうしろと!!」
「世話してあげてよ、元々、うたまるの世話はお兄ちゃん達に頼んであるしね♪」
「頼んであるしね♪
じゃ無い!」
「じゃあ、よろしくねー」
「おい、ちょっと待て!おい!!」
プツ、ツー、ツー、ツー
「この状況どうしろと?」
俺は携帯を持ったまま嘯く。
「うたまるさんが……」
「どうした?」
音夢は肩を震わせている。
「うたまるさんが実はメスだったなんてー!!」
「ショックを受ける所はそこかーーーー!!!!」
思わず音夢にツッコミを入れる。
「さくらちゃんから話は聞いたよね?
音夢ちゃん、純一」
うたまる(?)は裸のまま裸ままこちらを向いて、言葉を発する。
「改めまして。私、うたまる。よろしくね!」
六月中旬。
夏も近いこの季節に。
波乱万丈な生活は幕を開けたのだった。
続…………………………きません(ぇ
後書き、かな?
でっき「またもや、おひさしぶりです。遅筆の管理人、でっきぶらしです」
うたまる「どうも、このお話のキーパーソンな筈のうたまるです」
でっき「作品中では確実にオスなのですが、無理やり改変しました」
うたまる「でも、酷いよね。私が主役な筈なのに、本編の殆どが音夢ちゃんとの掛け合いなんだもん」
でっき「それは仕方ない。音夢派だし」
うたまる「そんなこと言ってるけど、技量が無いだけじゃない?」
グサッ!
うたまる「それよりいいの?
SSなんて書いてて、学校の課題は?」
でっき「うぅ」
うたまる「そもそも、リクSSの方はどうなったの?」
ザクッ!!
うたまる「この作品がリハビリ作品とか言う話だけど、どうだか怪しいねぇ」
でっき「…………」
うたまる「しかも、変な所で切れてるし」
でっき「それは元々こういうオチのつもりだったし……」
うたまる「ふ〜ん。で、続きを書く気は?」
でっき「感想が入って、気が向いたら」
うたまる「では、最後に言いたいことは?」
でっき「ネコミミ最高!!!!」
うたまる「えぇぇぇぇぇ!?!?」
|